一人会社と個人事業主の違い メリット・デメリット
目次
確定申告の時期を経て、今後の事業展開や節税の観点から、法人成りを検討される個人事業主の方もいらっしゃるのではないでしょうか。法人成りがプラスになるかどうかは、売上規模や事業内容、今後の目標などによって異なります。
そこで今回は、代表が一人で運営する一人会社と個人事業主の具体的な違いを整理し、一人会社として法人化するメリットとデメリットについて解説します。
■一人会社と個人事業主の違い
一人会社とは一般的に、社長が一人で経営する従業員がいない会社を指します。一人会社と個人事業主は、一人で事業を営むという点では同じですが、様々な違いがあります。
〈一人会社と個人事業主の主な違い〉

開業の手続きは、個人事業主は税務署へ個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)を提出するだけで済みます。これに対して一人会社にするには法人設立登記が必要であり、登録免許税などの登記費用のほか、司法書士に委託する場合には司法書士報酬が発生します。また、管轄の税務署や都道府県税事務所、市区町村役場へ法人設立届出書の提出も必要です。
責任の範囲は、個人事業主は無限責任のため、事業で発生したすべての債務を負います。一方、一人会社である株式会社や合同会社などの法人は有限責任のため、原則として出資額以上の責任は問われません。
税金の面では、個人事業主は事業所得に対して所得税や住民税がかかるほか、法定業種に該当し、青色申告特別控除等の控除前の所得金額が290万円を超える場合には個人事業税も課税対象となります。なかでも所得税は、課税所得に対して5%~45%の超過累進税率が適用されます。
これに対して一人会社などの法人には、法人税、法人事業税、法人住民税、特別法人事業税が課税されます。法人の所得に対して課税される法人税の税率は、資本金1億円以下の場合で年800万円以下の部分は15%、年800 万円を超える部分は23.2%です。さらに役員報酬には給与所得控除が適用されることから、所得によっては法人化による税負担の軽減が期待できます。(法人にかかる税金については、第65回「法人化するとかかる税金とは?節税対策になる?」にて詳しく解説しています。)
また、青色申告の損失の繰越は、個人事業主は最大3年間ですが、法人は最大10年間という違いもあります。(青色申告の損失の繰越控除については、第78回「青色申告の損失の繰越・繰戻しとは?個人事業主と法人の違い」をご参照ください。)
参照:
国税庁|No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除
社会保険に関しては、個人事業主本人は国民年金と国民健康保険に加入します。一部の業種を除いて、常時、従業員を5名以上雇用する場合には、従業員の厚生年金と健康保険への加入義務が発生します。一方、一人会社などの法人は経営者のみであっても、厚生年金と健康保険への加入が必要です。
参照:日本年金機構|事業所が健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき
■一人会社のメリット
一人会社のメリットとして、まず、法人格を持つことにより、取引先からの信用が得られやすく、特に新規取引では有利に働きやすいことが挙げられます。金融機関から融資を受けやすくなるほか、外部からの出資を募るなど、資金調達の幅も広がります。
また、法人は事業の譲渡や相続が可能であり、特に株式会社はスムーズに手続きを行いやすいです。
このほかには法人は役員社宅や出張手当、退職金など、経費として計上できる幅が広がることからも、所得によっては税負担を軽減できる可能性があります。
■一人会社のデメリット
一人会社として法人化すると、設立や運営のコストがかかることがデメリットに挙げられます。法人設立登記には登記費用がかかり、法人住民税の均等割は赤字でも税額が発生します。個人事業主の確定申告よりも、法人の決算申告は手続きが難しく、税理士報酬は法人の方が高いのが一般的です。
また、国民年金や国民健康保険よりも、厚生年金や健康保険の方が保障が手厚いため、社会保険加入義務が発生するのは必ずしもデメリットではありません。しかし、従業員を1~4人雇用している場合も、従業員分の社会保険料の負担が発生するのは、デメリットともいえます。
■法人成りを判断するための要素
個人事業主からの法人成りを判断する要素として、所得や事業内容、取引先などが挙げられます。
どの程度の所得から個人事業主よりも一人会社の方が税金の面で有利かはケースバイケースですが、一般的には売上1000万円以上、もしくは事業所得800万円以上が一つの目安となります。
設備投資などに多額の資金調達を必要とするケースや、BtoBビジネスを展開するケース、許認可を必要とするケースなどは法人の方が向いています。また、従業員を雇用する場合は社会保険の加入義務は発生しますが、人材確保の点からは法人の方が有利といえます。 一人会社などの法人成りに関して、税務面で何か疑問点がございましたら、お気軽にご質問ください。

BlueWorksGroupは、「専門家をもっと身近に。手軽に。」をモットーに、東京・大阪・名古屋に拠点を構えるプロフェッショナル集団です。若手の公認会計士・税理士・弁護士が所属し、会計・監査・税務・法務の専門性を活かしてサービスを提供。個人事業主からIPO準備企業・上場企業まで、さまざまな成長フェーズの企業をサポートし、「身近な専門家」として企業を支援しています。


