役員借入金・役員貸付金とは
目次
一人会社などの中小企業では、個人と会社の間でお金の貸し借りをするケースが少なくありません。しかし、特に会社が役員に貸し付けを行う役員貸付金が多額になると、税務上などのリスクがあります。
今回は役員借入金と役員貸付金について解説し、役員貸付金の注意点についても取り上げていきます。
■役員借入金とは
役員借入金とは、役員が会社に貸し付けているお金を指します。役員借入金の勘定科目で負債として計上します。会社には役員借入金を返済する義務があります。
役員借入金が発生するのは主に以下のケースです。
・資金不足のケース
・運転資金を調達するケース
・経費の立替払いをしたケース
・役員報酬の未払い金を転化したケース
銀行などの金融機関からの融資と比較して、役員借入金はスピーディに低利息、もしくは無利息で借入ができるというメリットがあります。役員借入金は、一般的に無利息での貸し付けであっても問題ありません。
■役員貸付金とは
役員貸付金とは、会社が役員に貸し付けているお金を指します。役員貸付金の勘定科目を用いて、資産として計上します。会社は役員から返済を受ける権利があります。
役員貸付金が発生するのは主にケースとして、以下が挙げられます。
・役員が個人的な理由で資金が必要となり、貸付を行ったケース
・役員が立て替えた経費の領収書を紛失して経費計上できないケース
・役員が私的に会社のお金を引き出したケース
・役員報酬の一部を役員貸付金として処理するケース
役員貸付金は一定の利息を徴収する必要がある点に注意が必要です。
〈役員貸付金の利息の規定〉
・会社が他から借り入れをして貸し付けたケース:その借入金の利率
・それ以外のケースでは:貸し付けをした日の属する年の利子税特例基準割合
※2026年の利子税特例基準割合は1.3%
例外に該当するケースを除いて、これよりも低い利息や無利息で貸し付けた場合には、差額が給与として課税されます。
〈低い利息や無利息で貸し付けた場合の例外に該当するケース〉
① 災害や病気などで臨時に多額の生活資金が必要となった場合に、合理的と認められる金額や返済期間で貸し付けるケース
② 会社で借入金の平均調達金利など合理的と認められる貸付利率を定めているケース
③ ①②以外のケースで、規定の利息によって計算した利息と実際に支払う利息の差額が、1年間で5,000円以下のケース
役員貸付金に限らず、社員に会社が金銭の貸付を行う場合も、利息に関するルールは同様です。
参照:
■役員貸付金の注意点
役員貸付金は税務調査を受けた際に、一定の利息を徴収していないケースなどでは、役員報酬と取り扱われるリスクがあります。役員報酬として扱われると、会社に源泉所得税の負担が発生し、不納付加算税が上乗せされます。さらに実際には利息を受け取っていなくても、規定の利息に対する法人税が発生します。
特に役員が私的に会社のお金を引き出したケースや、役員報酬の一部を役員貸付金として処理するケースは好ましくなく、注意が必要です。
また、多額の役員貸付金があると回収リスクの問題から、金融機関の印象が悪くなり、融資を受けにくくなることもあります。
役員が役員貸付金を返済せずに亡くなった場合には、法定相続人が借金を相続することになります。しかし、遺産がほとんどなく、法定相続人全員が相続放棄をした場合などでは、回収が難しくなることが考えられます。
役員貸付金の債権を放棄した場合には、役員賞与として支給したという扱いになりますが、損金算入はできません。役員への賞与を損益算入できるのは「事前確定届出給与」の要件を満たすケースのみのためです。(事前確定届出給与については、第96回「役員への賞与を損金算入できる!?事前確定届出給与とは」をご参照ください。)
こうした理由から、役員貸付金はゼロが望ましく、多額になっている場合には解消していくべきといえます。
■役員貸付金の解消方法
役員貸付金を解消する方法として、役員借入金がある場合には相殺する方法が挙げられます。
それ以外のケースで実行しやすいのは、役員報酬の一部を役員貸付金の返済に充てる方法です。ただし、役員の実質的な手取りが減るため、役員報酬を増額して増額分を返済に充てるという方法もあります。この方法をとる場合には2つの注意点があります。1つ目は会社と役員本人の社会保険料の負担が大きくなり、役員本人の所得税や住民税の負担もアップする点です。2つ目として、役員報酬の変更は、事業年度の開始日である期首から3ヶ月以内の1回のみしか認められず、それ以外のタイミングでは増額分が損金算入できなくなる点が挙げられます。(役員報酬の変更に関しては、第157回「役員報酬の変更方法」をご参照ください。)
あるいは、役員貸付金を退職金と相殺する方法もありますが、退職までの期間が長期にわたる場合には、その間は役員借入金を解消できません。
このほかには役員が所有する土地や建物などの不動産や自動車を会社に売却して返済に充てる方法もあります。ただし、売却益が出ると譲渡所得税がかかるほか、不動産登記を司法書士に委託する場合には、登録免許税に加えて報酬が発生する点などに注意が必要です。
役員貸付金が多額になるほど解消が難しくなるため、早めの対策が望ましいといえます。役員借入金や役員貸付金について、税務上の疑問点がございましたら、お気軽にご相談ください。

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