相続税対策には使えなくなる!?不動産小口化商品の評価方法の見直し
目次
令和8年税制改正において、相続税対策としても用いられてきた不動産小口化商品の評価方法の見直しが行われました。
今回は令和8年税制改正による不動産小口化商品の評価方法の見直しの背景や改正内容、これによる影響などについて解説します。
■不動産小口化商品とは
不動産小口化商品とは、特定の不動産を小口化して投資家に販売し、賃料収入や売却益を出資額に応じて分配する商品です。
不動産小口化商品には、任意組合型や匿名組合型、信託受益権型などの種類があります。
任意組合型は、出資した投資家が任意組合契約によって共同で事業主体となる形態です。金銭出資以外にも、現物出資や労務出資が可能で、出資比率に応じて所有権の持分を有するのが特徴です。収益は不動産所得に該当します。
匿名組合型は、事業者と投資家が匿名契約を結び、事業者が運用を行って投資家に収益を分配する形態をとります。金融商品に近く、分配金は雑所得となります。
信託受益権型は、投資家は不動産信託を利用して信託受益権を取得する形態です。信託受益権型による分配金は不動産所得として扱われます。
このうち、令和8年税制改正による不動産小口化商品の評価方法の見直しに関連するのは、不動産の所有権に関わる任意組合型と信託受益権型です。
■不動産小口化商品の現行の評価方法
現行の制度では、不動産小口化商品のうち任意組合型と信託受益権型の相続税の評価額は、現物の不動産と同様の評価方法が用いられていました。土地は路線価方式の場合で時価の8割程度、建物は固定資産税評価額が用いられ、時価の6割程度です。さらに収益不動産として賃貸に出されていることで、貸家建付地評価として評価額が抑えられました。
また、小規模宅地等の特例の貸付事業用の宅地等も、限度面積の範囲内であれば適用を受けることが可能です。
不動産小口化商品の任意組合型と信託受益権型は、現金や株式などの有価証券として財産を持っているよりも、相続税評価額を抑えられることから、相続税対策として用いられることも多く、生前贈与の手段としても使われていたのです。
参照:
国税庁:No.4602 土地家屋の評価
国税庁:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
■不動産小口化商品の改正後の評価方法
しかし、不動産小口化商品の実勢価格と相続税評価額の乖離が大きいことが問題視され、令和8年税制改正において、相続税の財産評価の適正化を図ることを目的に以下の見直しが行われました。
不動産特定共同事業契約又は信託受益権に係る金融商品取引契約のうち一定のものに基づく権利の目的となっている貸付用不動産については、その取得の時期にかかわらず、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価する。
「不動産特定共同事業契約又は信託受益権に係る金融商品取引契約のうち一定のものに基づく権利の目的となっている貸付用不動産」は、不動産小口化商品の任意組合型と信託受益権型が該当します。
この改正により、令和9年(2027年)1月1日以降に発生する相続や贈与からは、任意組合型と信託受益権型の不動産小口化商品は取得時期に関わらず、相続や贈与が発生したときの通常の取引価額で評価されることとなりました。
つまり、不動産小口化商品を既に購入しているケースも含めて、令和9年1月1日以降の相続や贈与では、相続税評価額が時価に変わります。
■相続税対策で不動産小口化商品を購入していた場合はどうする?
令和9年1月以降に任意組合型と信託受益権型の不動産小口化商品の相続が開始したケースや、贈与を行ったケースは、相続税評価額が時価となります。
そこで、相続税を抑えて次世代に資産を引き継ぐには、令和8年中の生前贈与という選択肢があります。現行制度での相続税評価額と時価との乖離が大きいほど、令和8年中に生前贈与を行う方が有利となることが考えられます。
ただし、生前贈与を選択する場合には、暦年課税と相続時精算課税制度のどちらが有利となるか、ケースバイケースとなるため、検討が必要です。
暦年課税は年間110万円の基礎控除があり、税率は10%~55%です。また、相続開始から7年前までに贈与された財産は、原則として相続財産に加算します。
相続時精算課税制度を利用した場合も、年間110万円の基礎控除年間があり、相続開始するまでの特別控除2,500万円を超えた場合に、一律で20%の贈与税が課税されます。相続時精算課税制度を利用して贈与を受けた財産はすべて相続財産に加算して精算します。相続時財産に加算制度を利用すると、小規模宅地等の特例は使えなくなる点に注意が必要です。
(相続時精算課税制度については、第12回「年間110万円の基礎控除が創設!相続時精算課税制度の改正とは」で詳しく解説しています。)
参照:国税庁|No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
不動産小口化商品は節税対策としてのメリットは薄れますが、特定の不動産に数万円から数百万円までの少額から投資できるという点は変わりません。
節税を目的に金融商品などを保有していても、税制改正によって想定していた効果が得られなくなることもあります。金融商品の購入を検討される際には、節税のみにとらわれない商品選択をしましょう。

BlueWorksGroupは、「専門家をもっと身近に。手軽に。」をモットーに、東京・大阪・名古屋に拠点を構えるプロフェッショナル集団です。若手の公認会計士・税理士・弁護士が所属し、会計・監査・税務・法務の専門性を活かしてサービスを提供。個人事業主からIPO準備企業・上場企業まで、さまざまな成長フェーズの企業をサポートし、「身近な専門家」として企業を支援しています。


