法人役員である個人事業主の社会保険の加入資格の明確化
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社会保険加入サービスを利用した個人事業主の国保逃れが社会問題となっています。そのような状況のなかで、厚生労働省から「法人の役員である個人事業主等に係る被保険者資格の取扱いについて」という通知が発出されました。法人役員である個人事業主の社会保険の加入資格を明確化するものです。
今回は社会保険加入サービスを利用したスキームや、法人役員である個人事業主の社会保険への加入資格の明確化について解説し、マイクロ法人についても触れていきます。
■「社会保険加入サービス」によるスキーム
一般社団法人を使った社会保険加入サービスは、これまでも違法性が疑われ、グレーゾーンとされてきました。社会保険加入サービスは、個人事業主が会費を支払うことで一般社団法人などの法人の役員となり、少額の給与を受け取って、社会保険(健康保険・厚生年金)に加入するというスキームです。
法人の役員は、社会保険への加入の労働時間による基準がなく、これまで報酬が発生していれば加入することが可能でした。
公的な医療保険は後期高齢者医療制度を除くと、会社員や公務員が加入する健康保険(被用者保険)と、個人事業主や無職の人などが加入する国民健康保険に分けられます。事業主と保険料を折半で負担する健康保険と比較して、国民健康保険は保険料が高く、家族の扶養の概念もありません。
また、公的な年金制度においては、会社員や公務員は厚生年金に加入していますが、個人事業主などは国民年金への加入となります。国民年金は配偶者に収入がなくても、夫婦それぞれ保険料を納付する必要があります。厚生年金への加入により、将来、手厚い年金給付を受け取ることが可能となり、配偶者を扶養に入れる場合は保険料の負担もなくなります。
さらに個人事業主が法人の役員を兼ねる場合は、社会保険料の算定基準となるのは法人の役員報酬のみという点からも、保険料の負担を軽減できます。
WEBサイトで「保険料を年間〇万円以上節約」と謳う、社会保険加入サービスの提供事業者もみられました。
■厚生労働省が「法人役員を兼ねる個人事業主」の社会保険の適用基準を明確化
こうした社会保険加入サービスを使った国保逃れを是正するため、2026年3月18日に厚生労働省が全国健康保険協会と健康保険組合、日本年金機構に対して、「法人の役員である個人事業主等に係る被保険者資格の取扱いについて」という通知を発出しました。
従来からの法人の役員の被保険者資格の判断基準として、「①その業務が実態において法人の経営に対する参画を内容とする経常的な労務の提供である」「②その報酬が当該業務の対価として当該法人より経常的に支払いを受けるものである」という2点が設けられていました。この判断基準を明確化するものです。
・法人の役員の被保険者資格の取扱い
今回の通知では法人の役員の被保険者資格の取扱いに関して、①の「経営参画を内容とする経常的な労務の提供」に該当しないと考えられるものとして以下が示されました。
・当該法人の役員会等に出席しているが、当該法人の役員への連絡調整や職員に対する指揮監督に従事していない場合
・当該法人において求めに応じて意見を述べる立場にとどまっている場合
②の「その報酬が業務の対価としての経常的な支払いに該当しない」と考えられるものについては、以下が示されました。
・役員会等への出席について支払われる報酬等
・旅費など実費弁償的な支払い
・退職手当(毎月の給与や賞与に上乗せして前払いされる場合には報酬等)
・法人の役員である個人事業主等に係る被保険者資格の取扱い
さらに法人の役員である個人事業主等に係る被保険者資格では、これらに加えて明確な基準が設けられました。法人に使用されている実態がないことが確認された場合は、資格喪失の届出を提出させて、被保険者資格を喪失させることが明文化されています。
まず、②に関連して「役員としての報酬が業務の対価としての経常的な支払いとは認められない場合」として、個人事業主等が法人に対して、役員としての報酬を上回る額の会費等を支払っているケースが示されています。関連法人へ会費を支払っているケースも同様の扱いです。
① に関連して「この業務が法人の経営に対する参画を内容とする経常的な労務の提供と認められない場合」として、以下が挙げられました。
・知識向上のためのアンケートへの回答や勉強会への参加など、単なる自己研さんに過ぎないもの
・単なる活動報告や情報共有など、役員としての具体的な指揮監督や権限の行使に当たらず、直接的に法人の経営に参画しているとは認められないもの
・法人の事業の紹介などの協力やお願いにとどまっており、労務を提供する義務を負っているとは認められないもの
参照:厚生労働省|法人の役員である個人事業主等に係る被保険者資格の取扱いについて
■マイクロ法人を設立する場合の注意点
個人事業主が社会保険に加入するためのスキームには、自らマイクロ法人を設立する手法もあります。マイクロ法人に明確な定義はありませんが、出資者や役員が自分一人の小規模な法人を指します。
ただし、社会保険への加入目的で、個人と法人に所得を分散させた結果、事業実態がなくペーパーカンパニーとみなされると、経費が認められない、役員報酬の適正性が問われるといったリスクがあります。
また、法人化すると、赤字でも住民税の均等割が発生し、税理士報酬の負担が増加するなど、支出も増えることを認識しておきましょう。
厚生労働省からの通知の発出により、役員報酬を上回る会費を支払っているケースは、社会保険の加入資格が明確に否定されました。個人事業主の国民健康保険の保険料の負担は大きいですが、適正な運用が望まれています。

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