エンジェル投資家への優遇措置「エンジェル税制」とは
目次
個人投資家からスタートアップ企業への投資を促進するためのエンジェル税制は、令和7年税制改正によって2つの変更が加えられ、より利用しやすい制度へと変わります。
今回はエンジェル税制の対象となる企業や個人投資家、優遇措置の内容について押さえたうえで、令和7年税制改正による変更点について解説していきます。
■エンジェル税制とは
エンジェル税制とは、創業から間もないスタートアップ企業に投資する個人投資家(=エンジェル投資家)に対する税制上の優遇措置です。投資家がエンジェル税制の適用を受けるには、確定申告での手続きが必要です。
エンジェル税制による優遇措置には、優遇措置A、優遇措置B、プレシード・シード特例という種類があるほか、自己資金による起業を対象に起業特例が設けられています。
エンジェル税制の利用にあたっては、個人と企業のそれぞれに要件があります。スタートアップ企業は個人投資家から資金調達を行う前に、経済産業省からエンジェル税制の対象かどうか確認を受ける事前確認制度を利用することも可能です。事前確認を行った企業は経済産業省のホームページで公開されています。
【エンジェル税制の要件】
◆個人の要件
・投資先のスタートアップが同族会社の場合は、持株割合が大きい方から第3位までの株主グループの持株割合を順に加算し、初めて50%超の割合になる時の株主グループに属していない。
・自らが営んでいた事業の全部を承継させた個人や親族ではない。
・金銭の払込みにより株式を取得している。
◆企業の要件
・設立5年未満(優遇措置Bは10年未満)の中小企業者
・設立年経過年数や優遇措置ごとに設けられた研究者・新事業活動従事者、事業計画、売上高成長率などの要件を満たしている
・特定の株主グループ以外の外部からの投資を1/6以上(プレシード・シード特例は1/20以上)受け入れている。
・大規模法人グループの所有に属していない。
・未登録・未上場の株式会社である。
・風俗営業等の事業を行っていない。
【起業特例の要件】
◆個人の要件
・設立した会社の発起人である。
・設立した会社に自らが営んでいた事業の全部を承継させた個人や親族などではない。
・金銭の払込みにより株式を取得している。
◆企業の要件
・設立1年未満の中小企業者である。
・設立経過年数ごとに定められた研究者・新事業活動従事者などの要件を満たしている。
・特定の株主グループ以外の外部からの投資を1/100以上取り入れている。
・大規模法人グループの所有に属していない。
・未登録・未上場の株式会社である。
・風俗営業等の事業を行っていない。
・他の事業者から譲り受けた事業を主たる事業としていない。
■エンジェル税制の優遇措置の内容
エンジェル税制には、投資時点と株式売却時点での優遇措置が設けられています。通常、上場株式の譲渡益と未上場株式の譲渡損失は損益通算できませんが、エンジェル税制では可能となります。
【投資時点】

投資時点での優遇措置はいずれかの選択適用となります。
◆優遇措置A/優遇措置A-2
優遇措置A・優遇措置A-2は設立から5年未満のスタートアップ企業が対象です。優遇措置Aは外部資本比率1/6以上、優遇措置A-2は外部資本比率1/20以上の企業が対象となります。
優遇措置A・優遇措置A-2のいずれも、その年の総所得から対象企業への投資額全額から2,000円を引いた額の控除が受けられ、課税繰延となります。控除額の上限は、「総所得金額×40%」と「800万円」のいずれか低い方です。
◆優遇措置B
優遇措置Bは設立から10年未満で、外部資本比率1/6以上のスタートアップ企業が対象です。その年の株式譲渡益から、対象企業への投資額全額の控除を受けられ、課税繰延となります。優遇措置Bには控除額の上限はありません。
◆プレシード・シード特例
プレシード・シード特例は設立から5年未満で、外部資本比率1/20以上のスタートアップ企業が対象となります。その年の株式譲渡益から投資額全額の控除が受けられます。控除額は20億円を上限に非課税となり、20億円を超えた部分は課税繰延となります。
◆起業特例
起業特例は、設立1年未満で外部資本比率1/100以上のスタートアップ企業が対象です。その年の株式譲渡益から企業設立時の自己資金による出資額全額の控除を受けられます。企業特例も、控除額は20億円を上限に非課税、20億円を超えた部分は課税繰延です。
【株式譲渡時点】
対象となるスタートアップ企業の株式を譲渡した際には、その年の他の株式譲渡益と損益通算ができるだけではなく、引ききることができなかった損失を翌年以降3年間の株式譲渡益と損益通算ができます。
スタートアップ企業が上場することなく、破産や解散などによって株式の価値がなくなった場合にも、翌年以降3年にわたって損失の繰越が可能です。
また、株式の譲渡所得を算出する際には、譲渡価額から取得時用などの必要経費を引きますが、エンジェル税制の適用を受けて課税繰延分がある場合には、取得費用から課税繰延分を引くことになります。そのため、必ずしも課税繰延による節税効果があるとは限らない点に注意が必要です。
■令和7年税制改正による変更点
令和7年税制改正により、エンジェル税制は2つの点が変更となりました。
◆再投資期間の延長
優遇措置Bとプレシード・シード特例、起業特例の適用を受けるには、株式譲渡益が生じた年と同一年内にスタートアップ企業に再投資をする必要がありました。事前確認制度を利用して、投資対象のスタートアップ企業が事前に財務省に対象となるか確認をとると、時間的な余裕がなく利用しにくいことが難点とされていました。そこで、2026年1月以降は、その年だけではなく前年の株式譲渡益からも対象企業への出資額の控除が可能となり、繰戻し還付請求ができるようになります。
◆保有期間の設定
プレシード・シード特例と起業特例は、IPOやM&Aを行った場合を除いて、株式を取得した翌年末までの保有期間が設定されます。これにより、再投資の翌年に対象企業の株式を譲渡した場合には非課税の適用は受けられず、課税繰延として扱われます。
エンジェル税制は適用要件がやや複雑です。スタートアップ企業の経営者や法人成りを考えている方などで資金調達にあたって、エンジェル税制の適用要件や事前確認手続きなどについて疑問がある場合は、お気軽にご質問ください。

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