個人事業主が納期限までに所得税を納付できないときの対処法
目次
所得税の確定申告期限・納期限が迫っていますが、納期限までの納付が難しい場合には、そのまま放置することはせず、延納制度や猶予制度の利用を検討するのが望ましいです。
今回は個人事業主の方に向けて、所得税の納期限や滞納した場合の延滞税について触れたうえで、納期限までに所得税を納付できないときの対処法について解説していきます。
■所得税の納期限と納付方法
所得税の確定申告期限と納期限はともに3月15日です。ただし、令和7年(2025年)分は令和8年(2026年)3月15日が日曜日のため、3月16日となります。
所得税の納付方法には以下の種類があり、納付方法によっては支払いを先延ばしできます。
・振替納税:預貯金口座の届出を事前に行い、国税庁が指定する振替日に口座引落しにより納付する
・ダイレクト納付:e-Taxを利用して事前に登録した預貯金口座から、手続き方法によって即日、納期限までの期日指定、あるいは法定納期限に、引き落としにより納付する
・インターネットバンキング等からの納付:インターネットバンキングやATMなどから納付する
・クレジットカード納付:国税クレジットカードお支払サイトからクレジットカードを使用して納付する
・スマホアプリ納付:e-Taxを経由して、国税スマートフォン決済専用サイトから、スマホ決済アプリを使用して納付する
・コンビニ納付:国税庁ホームページから納付情報のQRコードを作成し、コンビニエンスストアで現金で納付する
・現金による納付:金融機関、または所轄税務署の窓口で現金や小切手で納付する
このうち振替納税の振替日は令和8年4月23日のため、納期限よりも実際の支払いを1ヶ月以上先送りできます。また、クレジットカード納付も納期限までの手続きが必要ですが、実際にカード会社から所得税の納付分の引き落としがされるのは、カード会社によって決められた期日となります。
参照:
国税庁|G-2-2 ダイレクト納付(e-Taxによる口座振替)の手続
■延滞すると延滞税が発生
所得税を納期限までに納付しない場合には、法定納期限の翌日から完済するまでの期間にわたり、延滞税が発生します。
令和8年1月1日から12月31日までの延滞税の税率は、納期限の翌日から2ヶ月を経過する日までは年2.8%、納期限の翌日から2ヶ月を経過した日以後は年9.1%です。
預貯金口座の残高不足によって引き落としができなかった場合にも、同様に延滞税が発生する点に注意が必要です。この場合、延滞税計算のスタートは、振替日等ではなく、本来の法定納期限の翌日からになりますので、併せてご注意ください。
■対処法1:延納制度
所得税額を全額納付するのが難しい場合の対処法として、延納制度を利用する方法があります。
延納制度は納期限までに所得税額の2分の1以上納付すれば、5月31日まで納期限が延長される制度です。令和8年5月31日は日曜日のため、令和7年分確定申告の延納分の納期限・振替日は6月1日となっています。
延納制度を利用するには、確定申告書第一表の【延納の届出】欄の「申告期限までに納付する金額」と「延納届出額」を記入するだけで済みます。
ただし、延納期間中は利子税が課税されます。利子税の税率は年1.3%ですので、延滞税を支払うよりも負担を抑えられます。
参照:国税庁|【税金の納付】
■対処法2:猶予制度(納税の猶予)
所得税などの国税の猶予制度には納税の猶予と換価の猶予があります。納税の猶予は、災害や病気・ケガ、休業・廃業などにより、国税を一時に納付することができないと認められる場合に、納税が猶予される制度です。
納税の猶予は以下のすべてに該当すると認められる場合があります。
〈納税の猶予の要件〉
1. 以下のいずれかに該当する事実があること
・震災や風水害、落雷、火災、その他の災害、または盗難によって、財産が損失を受けた
・本人、または生計を一にする親族が病気にかかった、または負傷した
・事業を廃止、または休止した
・事業で著しい損失を受けた
・上記のいずれかに類する事実があった
・本来の期限から1年以上経過した後、修正申告などによって納付するべき税額が確定した
2. 該当する事実により、国税を一時に納付できないことが認められる
3. 申請書が提出されている
4. 原則として担保の提供がある(猶予を受ける金額が100万円以内の場合や猶予を受ける期間が3ヶ月以内の場合のほか、提供できる担保がない場合は不要)
所得税の納税の猶予を受けたい場合には、以下の書類を添えて管轄の税務署に申請します。
〈所得税の納税の猶予の申請に必要な書類〉
・納税の猶予申請書
・猶予該当事実があることを証する書類
・(猶予を受けようとする金額が100万円以下の場合)財産収支状況書
・(猶予を受けようとする金額が100万円を超える場合)財産目録、収支の明細書
納税の猶予が認められると、猶予期間中の延滞税が軽減、または免除されます。また、財産の差押えや換価(売却)が猶予されます。
猶予期間中は、各月に分割して猶予を受けた所得税などの国税の納付が必要です。猶予を受けられる期間は1年以内で、財産や収支の状況に応じて最も国税を完納できると認められる期間となります。猶予期間中に完納できない理由が認められる場合には、当初の期間と合わせて最長2年まで猶予期間の延長が認められることがあります。
一方で、分割計画通りに納付しないケースや、猶予を受けた国税以外に新たに納付すべき国税を滞納したケースでは、猶予が取り消される場合がある点に注意が必要です。
参照:
国税庁|国税を一時に納付できない方のために猶予制度があります。
国税庁|猶予の申請の手引き|Ⅱ 納税の猶予(27から28ページ)
■対処法3:猶予制度(換価の猶予)
換価の猶予は国税を一時に納付することにより、事業の継続、または生活の維持が困難となる恐れがある場合に、差押財産の換価が猶予される制度です。換価の猶予には、申請による換価の猶予と、税務署長の職権による換価の猶予があります。
申請による換価の猶予は、以下のすべてに該当すると認められる場合があります。
〈申請による換価の猶予の要件〉
1. 国税を一時に納付することにより、事業の継続、または生活の維持が困難となる恐れがあると認められる
2. 納税について誠実な意思があると認められる
3. 換価の猶予を受けようとする国税以外の国税の滞納がない
4. 納期限から6ヶ月以内に申請書を提出している
5. 原則として担保の提供がある(猶予を受ける金額が100万円以内の場合や猶予を受ける期間が3ヶ月以内の場合のほか、提供できる担保がない場合不要)
所得税の申請による換価の猶予を受けたい場合には、以下の書類を添えて管轄の税務署に申請します。
〈所得税の申請による換価の猶予の申請に必要な書類〉
・換価の猶予申請書
・(猶予を受けようとする金額が100万円以下の場合)財産収支状況書
・(猶予を受けようとする金額が100万円を超える場合)財産目録、収支の明細書
換価の猶予が認められた場合は、猶予期間中の延滞税が軽減されます。また、差押えを受けていた財産の換価が猶予されます。
猶予期間中は各月に分割して猶予を受けた所得税などの納付が必要な点や、猶予期間、猶予が取り消されるケースは、納税の猶予と同様です。
参照:
国税庁|国税を一時に納付できない方のために猶予制度があります。
国税庁|猶予の申請の手引き|Ⅰ 換価の猶予(3から6ページ)
所得税を滞納すると、完納するまで延滞税が課されるため、滞納期間が長引くほど支払う必要がある金額が膨らみ、財産の差押えや換価処分が行われる恐れもあります。所得税の納期限までの納付が困難な場合にはお早めにご相談ください。

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