2025年4月にスタートした「イノベーション拠点税制」とは?
目次
国際競争力を強化し、知的財産権の開発に対する民間の投資を促進するため、イノベーション拠点税制が2025年4月からスタートしました。イノベーション拠点税制は、令和6年(2024年)税制改正大綱に盛り込まれていた施策です。
今回はイノベーション拠点税制の目的や制度の概要、手続きの流れなどについて解説していきます。
■イノベーション拠点税制とは
イノベーション拠点税制とは、企業が主に国内で自ら開発した特許権とAI関連のプログラムの著作物から生じるライセンスと譲渡所得に対して、30%の所得控除を行う減税措置です。
イノベーション拠点税制はイノベーションボックス税制、もしくはパテントボックス税制とも呼ばれています。2000年代にヨーロッパで導入が始まり、近年ではアジア諸国でも取り入れられてきました。
こうした背景もあり、研究開発の成果から生み出された所得に対する減税措置を通じて、日本が研究拠点としての立地競争力を高め、民間の無形資産投資を促進することを目的としています。
<各国のイノベーション拠点税制の導入年>
・2001年:フランス
・2007年:ベルギー、オランダ
・2013年:イギリス
・2014年:韓国(中小企業を対象)
・2016年:アイルランド
・2017年:インド、イスラエル
・2018年:シンガポール
・2020年:スイス
・2024年:香港
日本のイノベーション拠点税制で対象となる所得はライセンス所得と譲渡所得ですが、製品売却益も対象に含まれる国もあるなど、所得控除の対象となる所得には違いがあります。
■イノベーション拠点税制の仕組み
イノベーション拠点税制は、2025年4月から7年間の時限措置として制定されました。所得控除額(損金算入額)の計算式は以下の通りです。
所得控除額(損金算入額)=対象となる知的財産権由来の所得×自己創出比率×30%(所得控除率)
・対象となる知的財産権
イノベーション拠点税制の対象となる知的財産権は、申告する法人が2024年4月以降に取得した特許権、または2024年4月以降に製作したAI関連プログラムの著作物です。
イノベーション拠点税制において、AI関連プログラムの著作物に該当するのは以下の3種類です。
<AI関連プログラムの著作物>
・機械学習に必要な電子計算機を稼働するために必要なプログラム
・AIモデルによる機械学習アルゴリズムのプログラム
・AIモデルによる機械学習をサポートするプログラム
・対象となる所得
イノベーション拠点税制の対象となる所得は、ライセンス所得と譲渡所得です。関連者からのライセンス所得や、関連者または国外法人からの譲渡所得は除かれます。
また、複数の知的財産権を同時に取引するケースで、イノベーション拠点税制の対象と対象外の知的財産権がある場合には、対象となる知的財産権の対価の額を明確にする必要があります。
・自己創出比率
イノベーション拠点税制における自己創出比率とは、対象となる知的財産権の取得または製作のために必要となった研究開発費のうち、企業が主に国内で自ら行った研究開発の割合です。2025年4月以降に発生した研究開発費が対象になります。
自己創出比率は以下の計算式で求めます。
自己創出比率=適格研究開発費/研究開発費合計額
適格研究開発費=研究開発費の額-他者の対象知財の取得費・支払ライセンス料-国外関連者への委託試験研究費-国外事業所で行った事業に係る研究開発費
参照:
経済産業省イノベーション・環境局研究開発課|イノベーション拠点税制(イノベーションボックス税制)
経済産業省|イノベーション拠点税制(イノベーションボックス税制)ガイドライン
■イノベーション拠点税制の手続き方法
イノベーション拠点税制の適用を受けるためには、対象となる知的財産であることや、関連する研究開発であることを判別するために、経済産業省において確認と証明書の発行を行っています。また、AI関連ソフトウェアの著作物に関しては、判別に専門的な知見が必要とされることから、一般社団法人ソフトウェア協会による事前確認が必要です。
経済産業省への申請期間は、事業年度末⽇の60⽇前~30⽇後です。ただし、証明書発行に係る標準処理期間は60日とされているため、早めに手続きを行う必要があります。経済産業省への事前相談は、通年で受付が行われています。
<特許権の場合の手続きの流れ>
① 企業が経済産業省に申請書を提出する。
② 経済産業省が申請書を確認し、基準を満たしている場合には企業に証明書が交付される。
③ 企業は税務申告時に経済産業省の証明書を添付する。
<AI関連ソフトウェアの著作物の場合の手続きの流れ>
① 企業が一般社団法人ソフトウェア協会にAI関連であることの調査の申請書を提出する。
② 一般社団法人ソフトウェア協会が確認後、企業にAI関連であることの証明書を交付する。
③ 企業が経済産業省に申請書とAI関連であることの証明書の写しを提出する。
④ 経済産業省が申請書を確認し、基準を満たしている場合には企業に証明書が交付される。
⑤ 企業は税務申告時に経済産業省の証明書を添付する。
参照:
経済産業省イノベーション・環境局研究開発課|イノベーション拠点税制(イノベーションボックス税制)
経済産業省|イノベーション拠点税制(イノベーションボックス税制)ガイドライン
■研究開発税制と両輪でイノベーションを促進
従来から設けられていた研究開発税制は、研究開発投資額の一定割合を法人税額から税額控除する制度です。研究開発税制は研究開発における不確実性のリスクの軽減を図り、研究開発投資を促進する役割を持っています。
研究開発税制は研究開発のインプットに対するインセンティブとなる制度なのに対して、イノベーション拠点税制は研究開発のアウトプットに対するインセンティブとなる制度です。
研究開発税制とイノベーション拠点税制により、研究開発による技術を事業化し、得られた収益を再投資することで、イノベーションの促進を図るという狙いがあります。
イノベーション拠点税制の利用にあたっては、経済産業省への事前相談や申請手続きが必要となり、適格研究開発費を正確に算出することが求められます。イノベーション拠点税制の利用を検討される場合には、お気軽にご相談ください。

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