所得税の累進課税制度の仕組みとは
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確定申告を終えて、売上アップによって想定よりも所得税の負担が増えたと感じている方もいるのでは。事業所得や給与所得などにかかる所得税は累進課税制度の対象となっているため、所得が増えるほど段階的に税負担が重くなります。
今回は所得税の累進課税制度の仕組みを解説し、超過累進課税と単純累進課税の違いにも触れていきます。
■累進課税制度とは
累進課税制度とは税率が一律ではなく、課税対象となる所得や財産による基準に応じて、税率が段階的に高くなる仕組みをいいます。
累進課税制度は、負担できる能力に応じて徴収することによって公平性を確保し、所得の再分配を行うのが目的です。
たとえば、「Aさん:所得2,000万円」「Bさん:所得200万円」として考えていきます。税率が一律30%の場合は、Aさんは税金が600万円で手元に1,400万円残ります。しかし、Bさんは税金として60万円を支払うと、残りは140万円となり、生活が厳しくなります。そこで、Aさんは税率40%、Bさんは税率5%とします。Aさんは税金が800万円となるため税負担が重いと感じる可能性がありますが、Bさんは税金が10万円で190万円が手元に残るため、税負担による生活苦を感じにくくなります。
累進課税制度は経済格差を緩和し、公平性のある社会を実現するために導入されています。
■単純累進課税制度と超過累進課税制度の違いとは
累進課税制度には、単純累進課税制度と超過累進課税制度という種類があります。
単純累進課税制度は課税所得が一定額を超えると、全体に高い税率が適用されます。これに対して、超過累進課税制度では課税所得が一定額を超えると、超えた部分のみに高い税率が課税されるという違いがあります。
計算例をもとに違いをみていきます。
【単純累進課税制度】/課税所得100万円以下:税率10%、100万円以上300万円以下:税率20%
課税所得100万円の場合の税額:100万円×10%=10万円
課税所得110万円の場合の税額:110万円×20%=22万円
課税所得250万円の場合の税額:250万円×20%=50万円
【超過累進課税制度】課税所得100万円以下の部分:税率10%、100万円を超えて300万円以下の部分:税率20%
課税所得100万円の場合の税額:100万円×10%=10万円
課税所得110万円の場合の税額:100万円×10%+(110万円-100万円)×20%=12万円
課税所得250万円の場合の税額:100万円×10%+(250万円-100万円)×20%=40万円
超過累進課税制度は、税率の境目を超えても極端に税額が増えないのが特徴です。日本の所得税で採用されているのは、超過累進課税制度です。最高税率は45%ですが、所得全体に45%の税率が課されるわけではありません。
■累進課税制度の対象
日本では所得税のほか、相続税と贈与税も累進課税制度の対象となっています。ただし、所得税のうち、超過累進課税制度の対象となるのは課税方法が総合課税の所得のみで、申告分離課税や源泉分離課税が適用される所得は対象外です。
累進課税制度の対象となる総合課税の所得として、主に給与所得や事業所得、不動産所得、雑所得(先物取引に係わる所得などを除く)、一時所得(一時払養老保険・一時払損害保険の差益などによる所得を除く)などが挙げられます。
■所得税の計算方法と税率の仕組み
総合課税の対象となる所得の所得税は、以下の流れで計算します。
1.収入から費用を引いて各所得の所得額を求める。(給与収入は給与所得控除を引く。)
2.各所得の所得額を合計した合計所得金額から所得控除額を引き、課税所得金額を求める。
3.課税所得金額に税率を掛けて、税額を求める。
4.税額控除の適用を受けられる場合は、税額から税額控除額を引く。
所得控除には基礎控除や扶養控除、配偶者特別控除、配偶者控除、生命保険控除、地震保険控除といった種類があります。税額控除に該当するのは住宅ローン控除などです。
所得税法第89条では、税率は以下のように規定されています。
<所得税の税率>

ただし、所得税を計算するときに、税率の段階ごとに分けて計算するのは手間がかかるため、国税庁のホームページなどには速算表が掲載されています。
<所得税の速算表>

速算表を使うと、課税所得金額に税率を掛けて、該当する控除額を引いて、税額を簡単に計算することができます。
参考までに、税率の段階ごとに分けて計算する方法と速算表を使った計算方法を使った例を挙げます。
<例:課税所得700万円のケース>
◆税率の段階ごとに分けて計算する方法
195万円×5%+(330万円-195万円)×10%+(695万円-330万円)×20%+(700万円-695万円)×23%
=9万7,500円+13万5,000円+73万円+1万1,500円
=97万4,000円
◆速算表を使った計算方法
700万円×23%-63万6,000円=97万4,000円
所得税は負担できる能力に応じた税負担とし、経済的な格差を緩和するために、累進課税制度が採用されています。とはいえ、所得が大きくなるほど税負担が重くなります。そこで、iDeCoや小規模企業共済、住宅ローン控除、ふるさと納税などを利用して節税する方法もあります。

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