不動産所得の税金の基本
目次
不動産投資で得られる利益には、投資物件の売却による利益であるキャピタルゲインと、賃料収入による利益のインカムゲインがあります。
今回は区分所有マンションやアパート、貸家などの不動産を所有し、賃貸運用によるインカムゲインを得ることに興味がある方に向けて、不動産所得に関わる所得税について解説します。不動産所得で必要経費になるもの・ならないもの、事業的規模などについて取り上げていきます。
■不動産所得とは?
所得税において、所得は10種類に分類されています。そのうち不動産所得とは、以下のいずれかによって得た所得をいいます。
・土地や建物などの不動産の貸付
・借地権や地上権といった不動産の上に設定された権利の貸付
・船舶や航空機の貸付け
参考:国税庁|No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)
ここでは不動産所得の中でも一般的である、土地や建物などの不動産の貸付による所得について取り扱っていきます。
■不動産投資で必要経費になるもの・ならないもの
不動産所得は次に挙げる計算式で求めます。
不動産所得=総収入金額-必要経費
総収入金額に該当するのは賃料のほか、共益費・管理費、礼金、敷金・保証金のうち借主に返還しない部分です。
必要経費は不動産所得を得るために支出した費用が該当します。
【不動産投資で必要経費になるもの】
・不動産取得税や登録免許税、固定資産税・都市計画税、印紙税、事業税
・火災保険料、地震保険料といった損害保険料
・修繕費
・水道光熱費
・地代家賃(借りた土地に建てた建物を貸している場合)
・管理費(区分所有マンションの場合)
・管理手数料(賃貸管理を委託している場合)
・建物の減価償却費
・土地や建物の購入に関わるローンの利子
・広告宣伝費
・交際費
・交通費
・通信費
【不動産投資で必要経費にならないもの】
・土地や建物の購入に関わるローンの元本返済分
・所得税、住民税
アパートなどの土地と建物を購入した場合、建物部分は減価償却費として必要経費に入れることができます。減価償却費は、法律で決められた耐用年数に応じて分割して計上する方法で、建物は構造によって耐用年数が異なります。一方で土地は経年劣化しないため、土地部分の購入費用は減価償却費の対象になりません。
また、ローンを利用して土地や建物を購入している場合には、ローン返済額のうち元本返済部分は必要経費にはなりませんが、利子は必要経費に算入できます。
■不動産所得が事業的規模と認められる目安
不動産所得は、事業的規模と認められる場合には税務上の優遇措置が受けられます。不動産所得が事業的規模と認められる目安は、いわゆる「5棟10室基準」と呼ばれるものです。
【不動産所得が事業的規模と認められる目安】
・アパートやマンション:10室以上
・戸建て:5棟以上
アパートやマンションと戸建てを所有して賃貸経営を行っている場合は、「一戸建て1棟=アパート・マンション2室」という形で合算できます。
たとえば、「アパート8室、戸建て2棟」を所有している場合は、アパート10室(戸建て5棟)とみなされ、基本的に事業的規模と認められます。
【不動産所得が事業的規模と認められるメリット】
・青色申告をする場合に、青色申告特別控除(最高65万円)を受けられる。(事業的規模でない場合の青色申告特別控除は最高10万円)
・青色申告の事業専従者給与、白色申告の事業専従者控除の適用を受けられる。
・回収不能となった賃料を貸し倒れ損失として必要経費にできる。
・建物の取り壊しや除却による損失の全額を必要経費にできる。
ただし、個人事業主など事業所得がある場合には、不動産所得が事業的規模ではなくても、青色申告特別控除は最大65万円の適用を受けられます。
参考:国税庁|No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分
■不動産所得は総合課税
不動産所得は総合課税のため、事業所得や給与所得など他にも総合課税の対象となる所得がある場合には、合算して所得税を計算します。
たとえば、不動産所得と事業所得がある人が青色申告を行う場合には、それぞれの青色申告決算書を作成し、確定申告書は両方の所得を記載して作成します。所得税は、事業所得と不動産所得を合算して、基礎控除や扶養控除、社会保険料控除、生命保険料控除、青色申告特別控除などの各種所得控除を引いた課税所得金額を算出し、税率をかけて求めます。
◎例:事業所得400万円、不動産所得300万円、所得控除額合計200万円
400万円+300万円-200万円=500万円
500万円×20%-42万7,500円=57万2,500円
所得税57万2,500円
<所得税の速算表>

不動産所得は基本的に確定申告が必要です。個人事業主は事業所得と不動産所得などの他の所得を合わせて、1年間の所得が基礎控除額である48万円を超えると確定申告が必要になります。
1つの会社から給与の支払いを受けている会社員の場合は、給与所得以外の不動産所得など他の所得の合計が20万円を超えた場合に、確定申告が必要です。ただし、不動産所得が赤字の場合は、確定申告をした方が有利になることがあります。
不動産所得が赤字の場合は、事業所得や給与所得などの他の所得との損益通算が可能です。不動産所得で損益通算ができるのは、損失から土地の購入費用に関わる利子の分を引いた額となります。また、別荘など趣味や娯楽、保養目的の建物を貸している場合は、赤字になっていても、損益通算の対象にはなりません。(損益通算に関しては、第49回「損益通算できる所得・できない所得とは」で詳しく解説しています。)
個人事業主が不動産投資を行うと、不動産所得に関する収入や必要経費も含めて、所得税などの計算を行うことになります。不動産投資を始められる方や検討中の方は、税務上の取扱いについて、別途お気軽にご相談ください。

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