PPAの実務手順を5ステップで解説|無形資産識別からのれん計上まで
目次
PPAの実務プロセス全体像
PPA(Purchase Price Allocation:取得原価の配分)は、M&A後の会計処理において、買収価格を取得した資産・負債に配分する重要なプロセスです。
本記事では、PPAの実務手順を5つのステップに分けて、詳しく解説します。
Step1:識別可能資産・負債の洗い出し
1-1. 財務諸表の分析
まず、対象会社の財務諸表を分析し、帳簿に計上されている資産・負債を確認します。
確認する項目 – 有形固定資産(土地・建物・機械装置等) – 金融資産(現預金・売掛金・投資有価証券等) – 無形資産(ソフトウェア等) – 負債(買掛金・借入金・引当金等)
1-2. 帳簿外資産の識別
財務諸表に計上されていない無形資産を識別します。
識別すべき無形資産
顧客関係(Customer Relationships) 既存顧客との関係から得られる将来の経済的便益
ブランド(Brand / Trademark) 商標やブランド名の使用から得られる便益
技術(Technology / Patent) 特許・ノウハウ・技術から得られる便益
その他 – 受注残高(Backlog) – 有利な契約条件 – ノンコンピート条項 – ソフトウェア
1-3. ヒアリングの実施
対象会社の経営陣や事業責任者にヒアリングを行い、無形資産の内容を詳しく確認します。
ヒアリング項目 – 主要な顧客とその関係 – ブランドの市場での認知度 – 保有する技術・特許の内容 – 競合優位性の源泉
Step2:公正価値(時価)の算定
2-1. 有形固定資産の評価
不動産 不動産鑑定士による鑑定評価を取得します。
機械装置 – 再調達原価法 – 市場価格法
その他の有形固定資産 簿価が公正価値と大きく乖離していないか確認します。
2-2. 無形資産の評価手法
顧客関係:超過収益法(MEEM)
Multi-period Excess Earnings Methodの略で、顧客関係から得られる超過収益を現在価値に割り引いて評価します。
計算手順 1. 顧客関係による売上を予測 2. 顧客離反率(Attrition Rate)を設定 3. 必要資産に対する貢献資産控除(CAC)を計算 4. 税引後超過収益を算定 5. 現在価値に割引
ブランド:ロイヤルティ免除法
ブランドを外部から使用許諾を受けた場合に支払うであろうロイヤルティを免除されることによる便益を評価します。
計算手順 1. ブランド関連売上を予測 2. ロイヤルティ率を設定(業種により異なる) 3. ロイヤルティ相当額を計算 4. 税引後キャッシュフローを算定 5. 現在価値に割引
技術:ロイヤルティ免除法 or 超過収益法
技術の性質に応じて、適切な手法を選択します。
2-3. 金融負債の評価
有利子負債 市場金利と借入金利を比較し、公正価値を算定します。
引当金 退職給付引当金等について、適切な前提で再計算します。
Step3:のれんの算定
3-1. のれん算定式
のれん = 買収価格 - 識別可能純資産の公正価値
具体例
買収価格: 100億円
識別可能資産: 120億円
(内訳)
有形固定資産: 50億円
顧客関係: 30億円
ブランド: 20億円
技術: 15億円
その他: 5億円
識別可能負債: 50億円
識別可能純資産: 70億円
(120億円 - 50億円)
のれん: 30億円
(100億円 - 70億円)
3-2. 負ののれんの処理
買収価格が識別可能純資産の公正価値を下回る場合、負ののれんが発生します。
会計処理 – 日本基準:発生時に一括利益計上 – IFRS:発生時に一括利益計上 – US GAAP:発生時に一括利益計上
3-3. のれんの配分
事業セグメントが複数ある場合、のれんを適切なセグメントに配分します。
Step4:PPAレポートの作成
4-1. レポートの構成
標準的な構成
- エグゼクティブサマリー
- M&A取引の概要
- 評価手法の説明
- 有形固定資産の評価
- 無形資産の評価
- 負債の評価
- のれんの算定
- 前提条件と感度分析
- 添付資料
4-2. 評価手法の詳細記載
各無形資産について、以下を詳細に記載します。
- 評価手法の選択理由
- 前提条件(成長率・離反率・ロイヤルティ率等)
- 計算過程
- 感度分析
4-3. 前提条件の文書化
評価に用いた前提条件を明確に文書化します。
記載すべき前提 – 事業計画の概要 – 割引率(WACC)の計算根拠 – 顧客離反率の設定根拠 – ロイヤルティ率の設定根拠
Step5:監査対応とフォローアップ
5-1. 監査法人との協議
PPAレポート完成後、監査法人と協議を行います。
協議事項 – 評価手法の妥当性 – 前提条件の合理性 – 計算の正確性
5-2. 修正・追加分析
監査法人からの指摘事項に対して、必要に応じて修正や追加分析を行います。
5-3. 最終化
監査法人の承認を得て、PPAを最終化します。
5-4. 減損テストの準備
PPAで識別した無形資産やのれんについて、将来の減損テストに備えます。
減損テストの頻度 – 日本基準:減損の兆候がある場合 – IFRS:毎期実施(のれんのみ) – US GAAP:毎期実施(のれんのみ)
PPAでよくある論点
論点1:無形資産の識別漏れ
財務諸表に計上されていない無形資産を見落とさないよう、注意が必要です。
論点2:過大な無形資産計上
無形資産を過大に計上すると、のれんが過小になり、減損リスクが高まります。
論点3:顧客離反率の設定
顧客関係の評価では、顧客離反率の設定が重要です。過去データや業界平均を参考に、合理的な率を設定します。
論点4:ロイヤルティ率の設定
ブランド評価では、業種や市場における地位に応じた適切なロイヤルティ率を設定します。
BlueWorksM&AのPPAサービス
BlueWorksM&Aでは、5ステップのプロセスに沿って、適切なPPAをご提供しています。
サービスの特徴
Big4で培った専門性 無形資産評価の豊富な経験を活かし、適切な評価を実施します。
丁寧な説明 各ステップの内容を丁寧に説明し、理解いただきながら進めます。
監査対応サポート 監査法人との協議・対応もサポートします。
適正価格 効率的な運営により、適正な価格でサービスを提供します。
まずは無料相談から、お気軽にお問い合わせください。
まとめ
PPAは、5つのステップで進めます。
Step1:識別可能資産・負債の洗い出し 財務諸表の分析、帳簿外資産の識別、ヒアリング
Step2:公正価値の算定 有形固定資産、無形資産、負債の評価
Step3:のれんの算定 買収価格と識別可能純資産の差額
Step4:PPAレポートの作成 詳細な評価手法と前提条件の文書化
Step5:監査対応とフォローアップ 監査法人との協議、減損テストの準備
BlueWorksM&Aは、適切なPPAプロセスを通じて、皆様のM&A後の会計処理をサポートいたします。
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