最近よく聞く「ステルス増税」って何?
目次
「ステルス増税」という言葉を聞いたことがありますか?収入が増えているのに、手取りで実感できない理由は、ステルス増税にも原因があるかもしれません。
今回は最近話題のステルス増税について、概念や当てはまる税金・社会保険料の具体例などを紹介していきます。
■ステルス増税とは
ステルス増税とは、増税と気付かれにくい方法で、実質的に税金や社会保険料の負担がアップすることを揶揄するものです。
敵のレーダーに検出されないように飛行する戦闘機をステルス戦闘機と呼ぶように、英語の「stealth(ステルス)」には、忍び、密かな行動といった意味があります。
ステルス増税と呼ばれるものの多くは、「○○税という言葉を用いない」「少額の徴収から始める」「制度変更に合わせて導入する」といった方法がとられています。
■ステルス増税の具体例:税金
ステルス増税と呼ばれているものの具体例として、まずは税金を上げていきます。
・インボイス制度
2023年10月にスタートしたインボイス制度とは、消費税の複数の税率に対応した仕入税額控除の仕組みです。2割特例や簡易課税制度を利用する場合を除くと、一定の事項を記載した帳簿とインボイスなどの請求書などの保存が仕入税額控除の要件となりました。
インボイスを交付できるのは、税務署長の登録を受けたインボイス発行事業者に限られます。しかし、インボイス発行事業者になるには課税事業者として消費税の申告が必要になることから、これまで消費税の納税が免除されていた小規模事業者も、課税事業者への転換を迫られました。
消費税の税率は変わりませんが、消費税を負担する個人・法人の範囲が実質的に広がっています。
・森林環境税の創設
2024年から住民税の均等割に上乗せされる形で、国税の森林環境税が徴収されています。2023年まで住民税に上乗せされていた復興特別税に代わる形でスタートしたため、負担のわかりにくさから、ステルス増税といわれることがあります。
(森林課税については、第16回「2024年度にスタートする「森林環境税」とは?」で詳しく解説しています。)
・生前贈与に関するルール変更
2024年1月1日以降に発生した相続から、生前贈与によって取得した財産を相続財産に戻して加算する期間が3年から7年に延長されました。延長された4年間に贈与を受けた財産のうち、総額100万円までは加算の対象外です。
生前贈与に関するルール変更は、駆け込み贈与による相続税の負担軽減を防ぐのが目的です。一方で相続時精算課税制度には基礎控除が創設されています。(詳しくは、第84回「2024年の相続税の変更点まとめ」をご参照ください。)
参照:国税庁|令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし
・たばこ税の増税
令和5年税制改正で打ち出された防衛力強化に係る財源確保のための税制措置のうち、令和7年税制改正において、たばこ税の増税が防衛特別法人税の創設とともに決定しました。
たばこ税の増税は、加熱式たばこの課税の適正化と国税のたばこ税の増税の2つの柱で行われます。加熱式たばこの課税の適正化は、2026年4月と10月の2段階で実施されます。国税のたばこ税の増税は、2027年4月と2028年4月、2029年4月の3段階で行われ、1本当たり0.5円ずつの引き上げとなります。
(たばこ税の増税については、第115回「防衛特別法人税による影響は?たばこ税も上がる!?」で詳しく解説しています。)
参照:財務省|令和7年税制改正
・復興特別所得税の延長
復興特別所得税は、東日本大震災からの復興のための財源確保を目的として創設されました。当初の課税期間は2013年から2037年で、税率は「基準所得税額×2.1%」です。
令和5年税制改正において、防衛力強化に係る財源確保のための税制措置として、所得税に関する措置も盛り込まれ、復興所得税を1%引き下げて課税期間を延長し、税率1%の新たな税金を創設されることになりました。これにより、2038年以降も「基準所得税額×2.1%」が徴収されることになります。
ただし、令和7年税制改正において、令和5年税制改正による防衛力強化に係る財源確保のための税制措置のうち、この所得税の措置のみは先送りされています。
参照:
国税庁|個人の方に係る復興特別所得税のあらまし|平成25年分の所得税から適用される復興特別所得税が創設されました
■ステルス増税の具体例:社会保険料等
社会保険料関連でステルス増税と呼ばれているものをまとめました。
・後期高齢者医療制度の保険料の引き上げ
後期高齢者医療制度の保険料の所得割率は、2022年・2023年度の9.34%から、2024年・2025年度は10.21%に引き上げられました。これにより2024年度の平 均 保 険 料 額は月額で6,575 円から7,082 円に増加しています。
参照:厚生労働省|令和6年度からの後期高齢者医療の保険料について
・高齢者の介護保険料の所得段階の変更
2024年度から介護保険の65歳以上の第1号被保険者の標準所得区分が9区分から13区分に細分化されました。これにより、高齢者の高所得者の介護保険料の負担がアップしています。(市町村によっては、標準所得区分と異なる所得区分が採用されています。)
・社会保険の適用拡大
「週の所定労働時間20時間以上」「所定内賃金月額88,000円以上」「2ヶ月を超える雇用の見込みがある」「学生でない」という4つの条件を満たすパート・アルバイトなどの短時間労働者は、企業規模要件によって段階的に社会保険の適用が拡大されてきました。2024年10月からは、従業員51人以上の企業で働き、4つの要件を満たす従業員が対象となりました。
今後、企業規模要件は段階的にさらに縮小・撤廃され、月88,000円以上の賃金要件も撤廃されることが予定されています。
・子ども・子育て支援金
子どもや子育て世帯の支援を目的とした子ども・子育て支援金が、2026年から医療保険料に上乗せされる形で徴収されます。子ども・子育て支援金の見込み額の平均は2026年度は250円、2027年度は350円、2028年度は450円です。
子ども・子育て支援金は独身者や子どものいない夫婦のみの世帯も対象としていることから、独身税とも呼ばれています。(子ども・子育て支援金については、第125回「独身税!?子ども・子育て支援金制度とは」をご参照ください。)
こうしたステルス増税の是非はともかくとして、税金や社会保険料などとして徴収されているものについて、きちんと把握しておくことが大切です。

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