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DD(デューデリジェンス)で発見される典型的な問題点10選

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BlueWorksM&A株式会社|公認会計士 若狭 剛

M&Aにおけるデューデリジェンス(DD)は、対象会社の実態を把握し、投資判断の精度を高めるための最重要プロセスです。しかし、DDの現場で実際にどのような問題が発見されるのかは、経験者でなければなかなかイメージしにくいものです。

本記事では、当社がこれまでに手掛けた数多くのDD案件から、特に頻度が高く、かつ投資判断に重大な影響を与える典型的な問題点を10個厳選してご紹介します。これからM&Aを検討される企業様、あるいは既にDDを控えている企業様にとって、事前準備の参考になれば幸いです。

1. 簿外債務の存在

DDで最も警戒すべき発見事項の一つが簿外債務です。貸借対照表に計上されていない債務、すなわち未払残業代、退職給付の積立不足、係争中の訴訟に対する引当不足、リース債務のオフバランスなどが代表的です。

特に中小企業のM&Aでは、税務申告ベースの決算を行っていることが多く、会計基準に照らすと認識すべき債務が計上されていないケースが頻発します。簿外債務の規模によっては、買収価格の大幅な減額交渉や、ディールブレイク(取引中止)に至ることもあります。

実務上のポイント:未払残業代は、勤怠データと給与明細の突合が基本ですが、そもそも勤怠管理が曖昧な企業では、労務DDと連携した推計が必要になります。財務DDだけでは発見が困難なため、領域横断的な視点が不可欠です。

2. 売上の計上基準・タイミングの不備

売上の計上基準が不明確、あるいは期ずれが常態化しているケースは非常に多くあります。特に、検収基準を採用すべきところを出荷基準で計上している、役務提供が完了していないのに前倒しで売上を立てている、といった事例は、対象会社の実質的な収益力を過大に見せてしまいます。

また、収益認識基準(2021年4月適用開始)への対応が不十分な企業では、本人・代理人の判定や変動対価の見積りなど、基準適用後に売上が大幅に減少する可能性もあります。

実務上のポイント:月次売上の推移を時系列で分析し、期末に不自然な売上の偏りがないか確認することが有効です。加えて、主要取引先への売掛金回転期間の変動分析も、計上タイミングの適切性を検証する重要な手法です。

3. 関連当事者取引の不透明性

オーナー経営者やその親族、関連会社との間で、市場価格から乖離した条件での取引が行われているケースは、中小企業のDDにおいて極めて多い発見事項です。典型的には、オーナーへの過大な役員報酬、親族会社への外注費の水増し、不動産の低額賃貸・高額賃貸などが挙げられます。

これらは対象会社の正常収益力を歪めるだけでなく、M&A後にこれらの取引を解消・適正化することで、収益構造がどう変化するかをシミュレーションする必要があります。

実務上のポイント:関連当事者取引の洗い出しには、勘定科目の相手先別明細だけでなく、登記情報や株主名簿との照合が有効です。税務DDとの連携により、税務上の寄附金認定リスクも同時に評価できます。

4. 在庫の過大計上・滞留在庫

製造業や卸売業のDDで頻繁に発見される問題です。実地棚卸が不十分で帳簿在庫と実在庫に乖離がある、評価減すべき滞留在庫や陳腐化在庫が簿価のまま残っている、原価計算の仕組みが不正確で在庫単価が歪んでいる、といった事例です。

在庫は粉飾決算の温床にもなりやすく、特に業績が悪化傾向にある企業では、在庫を膨らませることで売上原価を圧縮し、利益を過大に見せている可能性にも注意が必要です。

実務上のポイント:在庫回転期間の推移分析に加え、品目別のエイジング分析(滞留期間の分布)を行うことで、評価減の要否とその金額を定量的に把握できます。可能であれば実地棚卸への立会いが最も確実な検証方法です。

5. 税務リスク(過去の申告の誤り・移転価格税制)

過去の税務申告に誤りがあり、将来的に追徴課税を受けるリスクは、税務DDで重点的に検証すべき項目です。特に多いのは、交際費の損金算入限度額の誤り、減価償却方法の不整合、消費税の課税区分の誤りなどです。

また、海外子会社を有する企業では、移転価格税制への対応状況の確認が不可欠です。移転価格文書(ローカルファイル等)が未整備の場合、税務調査で多額の更正を受けるリスクがあります。

実務上のポイント:税務DDでは、過去3〜5年分の申告書・別表の検証に加え、税務調査の履歴と指摘事項の確認が重要です。クロスボーダー案件では、各国の税制と租税条約の適用関係も含めた多角的な分析が求められます。

6. 主要顧客・仕入先への過度な依存

売上の30%以上を単一の取引先に依存している場合、その取引先との関係が変化するだけで事業の存続が危ぶまれます。同様に、特定の仕入先への依存度が高い場合、原材料の供給途絶や価格交渉力の低下といったリスクを内包しています。

これはビジネスDDの領域ですが、財務DDにおいても売上・仕入の取引先別分析を通じて定量的に把握でき、バリュエーションへの影響(リスクディスカウント)を検討する材料になります。

実務上のポイント:取引先との契約書の確認(特に契約期間、解除条項、チェンジオブコントロール条項)と併せて評価することで、M&A後の取引継続リスクをより正確に見積もれます。

7. 人材・キーパーソンリスク

対象会社の事業価値が特定の人物に強く依存している場合、その人物がM&A後に退職するリスクは事業価値を根本から毀損します。特に、技術系企業における主要エンジニア、営業会社におけるトップセールス、オーナー経営者自身の個人的な取引関係などが該当します。

このリスクは財務データだけでは見えにくく、マネジメントインタビューや組織図分析を通じて初めて浮き彫りになることが多いです。

実務上のポイント:キーパーソンの特定後は、リテンションボーナスや競業避止条項などの手当てをSPA(株式譲渡契約書)に盛り込むことが一般的です。DDの段階でこれらの論点を抽出し、契約交渉に反映する流れが重要です。

8. IT・情報セキュリティの脆弱性

近年のDDで重要度が急速に高まっている分野です。基幹システムが老朽化しており更新投資が必要、セキュリティ対策が不十分でインシデント発生リスクが高い、ソフトウェアライセンスのコンプライアンス違反がある、といった問題が代表的です。

DX推進の文脈でも、対象会社のIT基盤の現状把握は、PMI(統合後の経営)において必要なIT投資額を見積もるために不可欠な情報です。

実務上のポイント:IT DDは専門性が高いため、必要に応じてIT専門家との連携が求められます。最低限、基幹システムの概要、保守契約の状況、直近のセキュリティインシデントの有無は確認すべきです。

9. 法務・コンプライアンスリスク

許認可の取得漏れや更新漏れ、労働法規への違反(未払残業代とも関連)、個人情報保護法への対応不備、環境規制への違反リスクなど、法務DDで発見される問題は多岐にわたります。

特にM&Aにおいては、チェンジオブコントロール条項(経営権移転時の契約解除条項)の存在確認が重要です。主要取引先との契約やライセンス契約にこの条項が含まれている場合、M&Aの実行自体に支障をきたす可能性があります。

実務上のポイント:法務DDは弁護士が担当しますが、発見されたリスクの財務的影響(損害賠償の可能性、是正コストなど)を定量化するには、財務・税務の専門家との連携が不可欠です。法務DDの結果を財務DDやバリュエーションに反映するプロセスが、統合的なリスク評価を可能にします。

10. 正常収益力の算定に影響する一時的・非経常的項目

DDの最終的なアウトプットの一つが「正常収益力」の算定です。過去の損益には、一時的な特別損益、非経常的な費用(訴訟和解金、災害損失、事業再構築費用等)、オーナー個人に帰属する費用(個人的な経費の会社負担、親族への給与等)が含まれていることが一般的です。

これらを適切に調整(ノーマライゼーション)することで初めて、対象会社の持続可能な収益力が見えてきます。この調整の精度が、バリュエーション(企業価値評価)の信頼性を左右します。

実務上のポイント:ノーマライゼーションは、財務DD担当者の経験と判断力が問われる領域です。調整項目の網羅性はもちろん、各項目がEBITDA倍率によるバリュエーションに与えるインパクトを意識した分析が、実務的な価値を生みます。

まとめ:DDの価値は「発見」だけでなく「活用」にある

上記の10項目は、DDで発見される問題の代表例にすぎません。重要なのは、発見された問題を「どう活用するか」です。

買収価格の交渉材料として使うのか、PMIの課題として織り込むのか、あるいはディールストラクチャー(取引スキーム)の変更で対応するのか。DDの発見事項を投資判断と実行計画に適切に反映するには、財務・税務・法務を横断的に理解し、M&Aの全プロセスを見据えた視点が求められます。

BlueWorksGroupでは、公認会計士・税理士・弁護士がワンチームでDDを実施し、発見事項の統合的な評価から、契約交渉・PMIまでを一気通貫で支援しています。DDに関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。

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公認会計士 若狭剛

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