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少子化対策で注目された所得税の「N分N乗方式」とは

目次

少子化対策の一環として、世帯単位で所得税を課税するN分N乗方式が注目を集めました。しかし、N分N乗方式は新たな不公平感を生む可能性があるほか、導入へのハードルが高いともいわれています。

今回は所得税の課税方式「N分N乗方式」の概要や計算方法を押さたうえで、有利になる人と不利になる人などについて考察していきます。

■N分N乗方式とは

N分N乗方式とは、世帯ごとに合計所得を算出して、世帯人数で割って税額を算出し、世帯人数をかけて納税額を計算するという課税方式です。N分N乗方式は1946年にフランスで導入されました。

日本の現行の所得税の課税制度は個人単位で課税するのに対して、N分N乗方式では課税単位が世帯という大きな違いがあります。

また、N分N乗方式の「N」は人数を表わしています。N分N乗方式と呼ばれているのは、世帯の合計所得を世帯人数「N」で割り(=N分)、税額を算出した後で世帯人数「N」を掛けて(=N乗)納税額を求めるためです。

超過累進税率など累進税率が適用されている場合は、子どもの人数が多く、世帯の人数が多いほど、所得が分割されて低い税率が適用されるため、少子化対策に有効とされています。

日本では、所得の区分を超えるごとに超えた部分に高い税率が適用される超過累進税率が採用されています。(所得税は所得の区分ごとに計算する必要がありますが、速算表を使うと簡単に計算できます。)

<所得税の速算表>

参考:国税庁|No.2260 所得税の税率

■N分N乗方式による所得税の計算方法

N分N乗方式で所得税を算出するには、以下の計算式を用います。

<N分N乗方式による所得税の計算式>

世帯の合計所得÷N(世帯人数)×税率=1人当たりの税額

1人当たりの税額の総額×N(世帯人数)=世帯の納税額

ただし、N分N乗方式が導入されているフランスでは、子どもは2人目までは0.5人、3人目以降は1人と数えます。たとえば、夫婦+子ども3人の世帯では、子どもは「0.5人+0.5人+1人」と数えるため、世帯人数は4人です。

【現行の課税方式とN分N乗方式の比較】

夫婦+子供2人の世帯で、現行の課税方式とN分N乗方式での納税額の違いを片働きと共働きのケースで比較しました。

(条件)

・基礎控除や社会保険料控除など各種所得控除を引いた課税所得で比較

・現行の所得税率を適用

・世帯人数は子どもの人数もそのままカウント

N分N乗方式を用いると、子供が2人いる世帯では現行制度よりも納税額が減ります。ただし、共働きよりも片働きの方が大幅な減税となります。

■N分N乗方式が有利な人・不利な人

N分N乗方式への変更によって、有利な人と不利な人を3つの切り口から見ていきます。

日本の所得税は超過累進税率を採用しているため、所得が多いほど高い税率の税金の負担が発生します。そのため、子供の人数が多い方が、世帯の合計所得を世帯人数で割ったときの1人当たりの金額が小さくなるため有利です。

また、共働きよりも片働きの世帯の方が、配偶者がいることによる所得の分散効果があるため、N分N乗方式による減税の恩恵を受けられます。

さらに高額所得層ほど高い税率の税金を負担していることから、所得税が大きく軽減される可能性があります。一方、所得税の最低税率の5%の部分のみを負担している場合には、子どもの数が多くてもN分N乗方式の恩恵を受けられません。

■N分N乗方式の課題

実際にN分N乗方式を導入するとなると、所得税の課税単位を個人から世帯へ変更するため、法律や納税システムの大がかりな改正が必要です。現行の税率のままでは、所得税の納税額が減る人と現状維持となる人しかいないことから、税収は大幅な減収となります。そのため、所得税の税率の見直しも含めた抜本的な改革が必要となります。

また、子どものいる高額所得層に有利な税制改正となるため、現行の制度よりも所得の再分配が行われにくくなることも課題です。新たに設定される税率によっては、中低額所得層は子どもがいても税負担が増える可能性もあります。

共働きよりも片働きに有利なため、年収の壁の解消や人手不足対策に逆行する動きとなることも懸念される点です。

ここまでに挙げた理由や、N分N乗方式がどの程度、少子化対策への効果があるのか不透明なことからも、日本で近い時期に導入されるのは考えにくいとされています。

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